食の思い出は、美味しさだけではない
食べ物の質は年々変化してきている。外食産業は進化し、多国籍になり、数年前では聞いたことがないようなメニュー名が瞬く間に浸透していく。でも、心の中に残り続ける食べ物の思い出は、美味しさだけではない。誰とどんなときに食べたのか。結局はそういうことが思い出になる。僕は小学生の頃、父と日本中の山奥に蝶の採集に出かけていた。昼食は旅館で握ってもらったおにぎりだったり、偶然見つけた食堂だったり、行き当たりばったり。無人ドライブインに置かれた食べ物の自動販売機を利用することも多かった。だいたい、大きな虫が建物の中にいて怖い。そしてハンバーガーのパンは加熱したことでしなしなになり、それがマズ旨だった。年齢を重ねると、少年時代はあっという間だったことを知り、親と過ごす時間の短さに愕然とする。でも、心に残り続ける。レトロミュージアムで、僕はそのかけがえのない思い出と久しぶりに出会った。