誰でも気軽に来られるお寺に/東光寺住職 彦坂怜宗さん

「ご縁があった場所は運命の場所?!


室町時代後期からある臨済宗妙心寺派のお寺「東光寺」。1500年頃、この土地を持つ華翁頼舜が嵐の夜に池から龍が天に昇って行くのを見たことを和尚に相談したところ、「龍が昇るのは聖なる場所。お寺を建てなさい」と言われ、2年かけて建立したと言われています。それから500年以上が経ち、現在は27代目住職である彦坂怜宗さんがこのお寺を次世代へ繋げようとしています。

東光寺

東光寺は、妙心寺派のなかで一番位が高いお寺ということもあり、住職になるにはいくつかの条件がありました。そんな中、修行を終えて京都にある本山(妙心寺)で務めていた彦坂さんが2019年3月に東光寺に来ることになりました。檀家さん達に「まずは名前だけでも覚えて帰って欲しい」と挨拶をしたところ、昔、お寺の近くに彦坂村があり今でも「彦坂トンネル」として名前が残っているから「名前はすぐ覚えたよ」と言われたそう。

彦坂さんは、「ここに来るという話が出てから、通常よりもかなり早く物事が進み、少し不安でしたが、この彦坂村が彦坂家の発祥の地であることを知り、鳥肌が立つほど驚いたのと同時に、ご先祖様がおいでおいでと言ってくれたからだと納得しました」と話します。

住職

地域に開かれたお寺を目指して


彦坂さんの家系は代々住職で、曽祖父が豊橋から三重県に移住して住職をしていました。彦坂さんが小さい頃は、学校から帰ると実家であるお寺に地域の人が集まり、農業の情報交換を行ったり、時には住職を交えて和気藹々と盃を交わしたりと、とても賑やかな場所でした。そこで彦坂さんも「お寺は誰でも分け隔てなく遊びに来られる場所でありたい」と考えるようになったといいます。

2019年以前の東光寺は、中庭などを一般公開しておらず、用事がないと行ってはいけない場所という雰囲気になっていました。あるとき、檀家総代さんから「70−80代はお寺に来るけど、次の世代、そしてもっと若い世代が来ないので、来られるような寺づくりをして欲しい」という相談を受けます。そこで、彦坂さんは2020年より小さなワークショップやイベントなどをスタート。当時はコロナ禍ということもあり人数を制限しながら行い、2023年からはマルシェや夏祭りなど、数百人規模のイベントを行って来ました。実は東光寺も25代目のときはそのようなイベントを行っており、夏祭りの賑わいを見た檀家さんが涙ぐみながら「昔に戻ったみたいやわ。子どもの頃を思い出す」と話すなど、とても喜ばれたそうです。

「人の行き交うお寺へ



ツツジ

東光寺は、秋に真っ赤に染まるドウダンツツジをはじめ、春は白い花、夏は新緑、そして庭を覆う苔など、四季折々に楽しめる場所。その様子は、SNSで公開されています。その理由は2つ。1つは、檀家さんだけでなく誰でも東光寺を見て知ることができるようにしたいという想い。実際に、SNSを見て訪れる人がとても多いそう。そしてもう1つは、近隣在住ではなく関東や関西に住む檀家さんに自分の菩提寺を身近に感じてもらうため。そのために、彦坂さん夫妻はほぼ毎日、境内の様子などを撮影し、SNSにて発信し続けています。

また、この四季を楽しめる庭を利用して、七五三や成人、結婚式などの撮影も行われています。人生の節目の思い出をつくることで、東光寺がより身近に感じて、また訪れる場所となる。結婚式の前撮りをした二人が、翌年の紅葉を見に訪れるなど、少しずつ縁を増やしています。


「現代版寺子屋「てらこやぁ」


東光寺では、無料で通える現代版寺子屋「てらこやぁ」を開催しています。小学生から中学生まで約22人の子が通っており、内容は書道を中心に、柿渋染や漆塗りなど、日本の伝統文化を体験できるものとなっています。これを始めたきっかけは、彦坂さんが法事に回ると、そこの施主であるおじいさんやおばあさんが皆「子どもの頃に東英和尚(25代目和尚)とあんなことをした、これやったら怒られた」とニコニコ話してくれたことから。

奥様

「小さい頃の思い出というのは歳を重ねても覚えていて、いまだに人を笑顔にしてくれるのか」という気づきを得たそう。と、同時期に檀家さんのお孫さんが書道を習いたいとやってきたということもありました。彦坂さんの奥様は、以前に京都で個展を開くほどの書の腕前があり、そこから書道教室としてスタートしました。


「アップグレードし続けること


彦坂さんが人を東光寺に集めて東光寺のファンをつくっているのは、にぎわいのある開かれたお寺にしたいという思いからですが、そこにはもう1つ理由があります。それは500年前に建立され、半壊などを経ながら修復などを繰り返し約300年前から姿を変えずにいる東光寺を後世に受け継ぎたいから。本堂の屋根は、檜の皮を10年以上乾燥させて使用する「檜皮葺(ひわだぶき)」と呼ばれる、日本古来から伝わる伝統的な手法でつくられています。この屋根が10年後には張り替えを行う必要があり、それには莫大な資金が必要になると言います。

屋根

そのためにも東光寺のファンをつくり、昔から続く伝統的な姿を残し続けていこうとしています。彦坂さんに今後どうしていきたいかと尋ねたところ、「継続です」という言葉がすぐに返ってきました。ただ継続と言っても、現状維持ではありません。「継続するためには、飽きがこないためにもアップグレードしていく必要があります」という言葉が続きました。

東光寺には、富士山から来た薬師如来が休む薬師堂や、手彫りで貴重な灯籠や季節限定の御朱印などさまざまな見どころがあります。「訪れた方にこんなところがあるなんて知らなかったと言われて、こんな素敵な場所が知られていないのがもったいなくて悔しかった」と言う彦坂さん。「山県と言えば東光寺」と言われるように、東光寺の歴史と伝統を守りながら、賑わいやファンを多くつくっていくことでしょう。

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