耕作放棄地を使い農体験を行う「まちづくり拠点」へ/アトレファームジャパン株式会社 代表取締役社長 若原雄一朗さん

年間通して訪れることができる体験農園に


山県市小倉にある「体験農園みとか」は、冬から春にかけてはいちご、初夏からはブルーベリー、ぶどうと続いて、秋はさつまいもと年中収穫体験ができる施設です。カフェも併設しており、施設の農園で採れた果物などを使ったオリジナルメニューも味わえます。

カフェ

みとかを運営するアトレファームジャパン株式会社の代表取締役社長 若原雄一朗さん。お会いすると、「自分は裏方で、お店の主役はスタッフの方々です」という言葉からお話が始まりました。

みとかは、単なる「いちご狩り」など「●●狩り」を楽しむだけのための施設ではありません。若原さんは「そもそも会社設立の目的は、地域を盛り上げるために『まちづくりの拠点』をつくること。そのための手段が、子どもからお年寄りまで楽しめる、果物狩りなどができる農業施設でした」と話します。年間を通して訪れてもらうために、季節ごとに収穫体験ができる農作物のラインナップを考え、その中で多くの人に愛される「いちご」を看板商品にしたそうです。

若原さん

多世代が楽しめる工夫


さらにみとかには、より多くの人に楽しんでもらえるよう設計のこだわりがあります。それは、体験するハウス内のベンチ(果物が育っている棚)の間を、一般的な80~90cmより約20cm広げ、100cmにしていること。結果として農作物の棚が減ってしまいますが、それよりも幅の広さを選んだ理由は、ベビーカーや車椅子の方にも体験してもらえるようにするため。山県市内周辺では3世代、4世代で休日を過ごす方々も多く、その行き先としてはもちろん、また「まちづくり拠点」として、地域の様々な世代の方が楽しめるように設計しました。実際に、週末や長期休みには家族連れの方が多く見られるそうです。

いちごハウス

さらに、ベンチの間の幅を広げたことは、思わぬところから喜ばれました。それは車椅子などを利用している方が多い介護施設や障害者施設です。「他の施設では断られたから、ここに来られてよかった」というお客さんの声も聞きました。様々な背景を持つ方にも体験していただこうと、今は施設から来る団体の方向けに入場料の割引を行っています。

みとかでは市内の子どもたちも大切に考えています。12月のいちご狩りオープン前は市内の保育園の園児たちをいちご狩りに招待し、さらに春には市内の園、小学校、中学校にみとかで採れたいちごを配っています。

いちご

住民が困っていた耕作放棄地を敢えて選ぶ


まちのことを考えている「みとか」が、この場所を選んだのは地域の住民の困り事から。耕作放棄地となっていた土地には山から猿や鹿が集まり、近隣の畑の農作物を荒らすなどの被害を出していました。山県市として根本的な解決策を求めていた中、若原さんたちはこの場所で「みとか」を始めることにしました。

店看板

アトレファームジャパンは、岐阜市に本社のある大日コンサルタント株式会社と、揖斐郡に本社のある西濃建設、そして山県市に本社のある株式会社大雅の3社がまちづくりの目的で2019年12月に設立した会社です。そして同年12月26日に山県市と「農業を核とした地域活性化に関する官民連携(PPP)協定」を締結し、2021年2月に体験農園みとかをオープンしました。

スタッフさん

コロナ禍でのオープンとなりましたが、カフェの構造が換気を重視していることや果物狩りが屋外体験であることから安全にアクティビティが楽しめる場所と認識され、来場者は右肩上がりで増えて行きました。若原さんも「オープンしてすぐにコロナ禍になりましたが、当時は遠くに出かけるのが怖いというような状況だったので、自分たちができる限り安全な対策をして、地元の方々が楽しめる場所になれば良いと思いました」と話します。


市内の点と点を結んで、まちを盛り上げる仕掛けを


みとかには年間約8万人が訪れますが、その多くがみとかだけを楽しんで帰ってしまうことをもったいなく感じていました。そこで、若原さんは市内の6施設の事業者とともに「山県回遊まちづくり推進協議会」を立ち上げました。施設を巡るスタンプラリーや、いずれかの施設で一定金額以上買い物をしてくれたお客様にクリアボトルを進呈し、お客様がそれを持って連携施設を利用するとドリンク割引を受けられるなどの取り組みを行なっています。

若原さんは県外から来るお客さんに半日〜1日をかけて市内を回遊してもらうことで交流人口を増やし、市内でもっとお金を使ってほしいと考えています。そこには「山県市内で消費してもらい、各事業者がそれを税金として納めて、山県市はそれを使ってまた新しい事業をおこして‥というようにキャッシュフローが回ることがまちづくりと思っているので、そこに少しでも貢献していきたい」という強い想いがあります。テレビなどの取材を受ける際にはみとかだけでなく他の施設を紹介したり、カフェには市内の事業者の商品を置いたり、また市役所が作成した市内を紹介するパンフレットを店に置くなどして、市内を回遊してもらえるよう日々PRしています。

店内

若原さんは最後に、「山県市内には一生懸命まちづくりをしている人がたくさんいて大きなポテンシャルを感じます。まず、この施設を『まちづくり拠点』として維持するために、会社として永続的に成長し続けないといけない。そして市内のまちづくりをしている人たちや施設などの『点』と『点』を、『線』で結ぶような活動を地道に行なっていきたい」と話してくれました。
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