もう一つの人生

街を歩いていると
なんとなく好きだなと思う家に
出会うことがある

毎日決まった時間に
新聞が届けられたであろう新聞受け
今にも子どもが飛び出してきそうな玄関

玄関の前には背の低い古びた椅子が道に面して置いてある
椅子の背後には、夕方時においしそうなお味噌汁の匂いが漂ってきそうなキッチンの小窓

庭先には柔らかな緑の葉をつけた感じのいい木が立ってたりする
あの家に住むとどんな気持ちがするのだろう

どれかひとつのパーツじゃなくて
そこにあるそのものに
ココロが魅かれることがある

今の暮らしを遠く離れて、この町で暮らしてみたらどんな感じがするだろう
ずっとは難しいかもしれないけれど、数年だったら出来るのではないか

まだ出会わっていない、もう一つの人生がそこにはあるのではないかと思いを馳せながら
貸家と書かれた看板の前を通り過ぎ
僕は旅を続ける

旅に出ること