

世界はいつも、決定的瞬間だ
実はコケを愛でる文化があるのは日本独自のものと言われます。コケは静かでありながらピンっと筋の通ったブレない美しさがある。どこか私たちの気質に通じるところがあるのかもしれません。山県では四季折々のいろいろな苔を楽しむことが出来ます。
”世界はいつも、決定的瞬間だ”
写真家/森山大道

写真家の森山大道の言葉をふと思い出す。いま自分の目の前に広がるこの世界も決定的瞬間なのだと、1ミリの迷いもなく自分の中で納得した。何の話?って聞かれて、コケの話だと答えたら馬鹿にされるかもしれない。でもそんなことはどうでも良い。
コケが生えている、そんな単純な話じゃない。
これまで全体を通してしか見ていなかったコケをフォーカスしてみてはじめて見えてきたことがある。コケは小さな生命の集合体だ。とてもとても小さいけれど、そこには確かに息吹が宿っている。小さなコケ達が自分の置かれた環境の下で、自分の持つ生命を目一杯輝かせて、あの壮観な緑の絨毯を創りあげているのだ。
決して派手ではないけれど、佇む美しさ。そんなコケを知っている自分に、ちょっと優越感すら湧いてくる。
大人になると、もうほとんどの事は知っているような気になって、自分が知らない事があるってことさえ、気が付けない。本当は自分が知っている事なんて、たかが知れている。見慣れたはずの景色だって、よく見たら全然知らない事なのかもしれないのに。
フォーカスしながら、改めて、この世はまだまだお前の知らない事だらけだぞ、コケにそう言われている気がする。
また違うコケに会いに行きたくなった。