

名古屋からすぐの異空間、ゲストハウス「ミヤマリトルバレー」
山県にゲストハウス「ミヤマリトルバレー」が誕生しました。立ち上げは、地域おこし協力隊として山県に移住した中村さん。多くの場所を旅して、様々な人と触れあってきた中村さんだから作れる場づくりがはじまります。

「足るを知る」ために、異空間山県に住む
「ここの川の水は群を抜いて綺麗なんですよね」
初めて山県を訪れた時に、この川に一目惚れをしたといいます。人が生活をしている範囲にこんなに綺麗な川があることに驚いたそうです。「山県の川はここの宝であり、誇りですね」そう語る中村大祐さんは2013年にここ山県に移住してきました。オーストラリアを旅していた後で、水の豊かさは生態系の豊かさであると、ちょうど水に対して意識的になっていたこともあり、この水の豊かな山県に心惹かれたそうです。
中村さんは地域おこし協力隊として農家レストランの立ち上げをサポートしながら、この土地の人々とかかわってきました。生活して分かった事は、住みにくいからこそ人々が知恵を出して生まれた独自の文化があり、その文化が今でも大切にこの土地に根ざしていること。そしてそれを次の世代に伝えるカッコいいお父さんや、お話好きな面白いおばあちゃんがたくさんいらっしゃる事。そんな地元の方の温かい人柄に触れ、ますますこの土地の自然や人、文化に惹かれていったそうです。
そして中村さんが田舎暮らしをする最大の理由は「足るを知る」を理解したいということでした。「食卓に並ぶほとんどのものが、自分の作ったものや友達が作ったもので出来上がった時、とっても満たされているなと思った。」お米や野菜だけでなく、味噌やしょうゆといった調味料まで、中村さんや友達、地域の方たちの手によって生み出されたもので食卓が彩られた時、幸せだなと感じるそうです。
何かを求めるよりも、既に自分は満たされている事を知る。それを知る事が本当の幸せ。いろんな人との関わりの中で自分が生かされていることを肌で感じられる魅力がここにはあるといいます。そしてこの魅力を伝える拠点として、ゲストハウスを作る事にしました。

ゲストハウスで繋がるもの
ゲストハウスにする建物はもともと旅館兼雑貨屋として使われていました。築70年が経過していて様々な部分の補修が必要でした。壁を張ったり窓を作ったり、なるべく自分で、時には仲間や町おこしに興味を持って一緒に取り組んでくれる若い人たちに手伝ってもらい1年かけてコツコツと補修を進めてきました。
地元産の製材を使ったり、地元が発祥の水栓バルブを使用したりと、地域にかかわりのある材料を多く取り入れました。また、「何十年もかけて出来上がったものがただのゴミになるのは寂しい、そこに蓄積されてきた歴史や思いを、形を変えて繋げていきたい」という思いから、廃校になった小学校の床板や建具をもらってきて張りなおした物もあります。
そしてここを訪れるとまず最初に目に入ってくる、入り口にかけられた暖簾にもご注目。温かみのあるオレンジ色の三枚の布からなっていますが、この三枚が微妙に違う色なのです。これは、山県市の特産品である美山杉、利平栗、伊自良大実柿を中村さんや山県市地域おこし協力隊の金子さんが草木染めで染色したもので、合併した高富町、伊自良村、美山町それぞれの地域がひとつに繋がっている事を形にしたものなんだそうです。こうして、この土地の歴史や文化、魅力が詰まったゲストハウスが完成しました。

ゲストハウスの先にあるもの
「ここに泊まった人が、この土地や住んでいる人と結びつくような場所になれば」
今地元の方は、町おこしのイベントを通して、人が来るという事に対して昔に比べてだいぶオープンになってきたそうです。このゲストハウスがお客さんとこの地域を結びつけるひとつの要となり、地域全体でお客さんを迎え入れるようになってくれればいいと思っているそうです。
「こんな田舎でおじいちゃんたちの口からゲストハウスって言葉が聞こえてくるのが面白いなって思う」という中村さんはとても嬉しそうでした。それは、お客さんにゲストハウスで宿泊してもらうことがゴールではなく、山県に来ることそのものが魅力になることを見据えているようにも感じました。
ゲストハウスという特別な空間で地元の人や他の旅行者と触れ合いながら、何ともいえない特別な時間を過ごす。中村さんがいろいろな場所を旅行してきて、記憶に残るのはいつもそういう場所だったからです。